部屋を借りるとき、募集サイトに並ぶ家賃だけを見て決めると、契約の段になって示される初期費用の大きさに驚くことがあります。初期費用は家賃の数か月分にふくらむことがあり、家賃は払えても初期費用の分の貯金が足りず、契約の直前で進めなくなる人は少なくありません。
とはいえ、初期費用は敷金や礼金、仲介手数料といった項目が組み合わさって決まるため、内訳や相場、抑える方法は分かりにくいものです。何にいくらかかるのかを先に知っておくと、部屋を探す段階から契約までに用意する資金を、あなた自身で見積もれるようになります。
この記事では、初期費用の内訳から、総額の相場、抑える方法、払う前に確認することまでをまとめました。契約前に初期費用の全体像をつかみ、必要な資金を無理なく準備する参考にしてください。
賃貸契約の初期費用の内訳
初期費用は、一つの大きな費用ではなく、いくつかの項目が合わさって決まります。まず内訳を知っておくと、不動産会社から示される見積もりの中身を理解でき、どこを削れるかも見えてきます。ここでは、初期費用を構成する項目を一つずつ見ていきます。
敷金は退去時の修繕に充てられる
敷金は、退去するときの原状回復や家賃の滞納に備えて、契約時に大家へ預けておくお金です。あくまで預け金なので、退去時に部屋を汚したり傷めたりした分の修繕費を差し引き、残った額は返還されます。家賃1〜2か月分が目安で、部屋をきれいに使えば戻る額はその分だけ多くなります。
つまり敷金は、払ったお金がまるごと消えるわけではなく、住み方しだいで手元に戻る部分がある費用です。ペットや喫煙で室内を傷めれば差し引かれる額は増え、逆にふだんの掃除を心がけていれば返還は多くなります。次の表も参考に、あなたの借りたい物件で敷金がいくらかかるかを確かめておいてください。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 敷金 | 家賃1〜2か月分 |
| 礼金 | 家賃0〜2か月分 |
| 仲介手数料 | 家賃0.5〜1か月分 |
| 前家賃 | 家賃1か月分 |
礼金は貸主に払う返還されないお金
礼金は、部屋を貸してくれる大家に対して、契約のお礼として払うお金です。敷金と違って預け金ではないため、どれだけ部屋をきれいに使っても、退去のときに返ってくることはありません。家賃0〜2か月分が目安で、近年は礼金を取らない物件も増えています。
だからこそ礼金の有無は、初期費用の総額に大きく響きます。家賃6万円で礼金2か月分なら、それだけで12万円が戻らないお金として出ていきます。同じような条件の物件でも礼金なしを選べば、この分をそっくり浮かせられます。募集情報で礼金が何か月分に設定されているかを、家賃と同じくらい注意して見てください。
仲介手数料は不動産会社に払う
仲介手数料は、物件を紹介し、契約の手続きを進めてくれた不動産会社に払うお金です。契約が成立したときに発生し、家賃0.5〜1か月分が目安になります。法律では家賃1か月分が上限と定められていて、それを超える請求は本来できません。
この手数料は会社ごとに設定が異なり、集客のために半額や無料にしている会社もあります。同じ物件でも、どの不動産会社を通して契約するかで手数料が変わることがあるため、紹介元によって初期費用の総額が数万円ずれることも起こります。見積もりで仲介手数料が何か月分になっているかを確かめ、上限を超えていないかも合わせて見ておいてください。
前家賃は入居月の家賃を先に払う
前家賃は、入居する月の家賃を、契約時にあらかじめ先払いしておくものです。多くの物件で家賃は前払いのため、入居月と、契約によっては翌月分の家賃を、初期費用としてまとめて求められます。目安は家賃1か月分です。
月の途中で入居する場合は、入居日から月末までの日割り家賃を、初月の前家賃として払うのが一般的です。たとえば15日から入居すれば、その月は半月分ほどの家賃で済む計算になります。入居日を月初にするか月末近くにするかで前家賃の額は変わるので、引っ越しの日取りを決めるときに、前家賃がいくらになるかも合わせて確かめておきましょう。

初期費用の相場
内訳が分かったら、次はそれらを合わせて全体でいくらになるのか、総額の相場を押さえます。おおよその見当がつくと、部屋を探す前の資金準備がしやすくなり、予算に合わない物件で悩む時間も減ります。ここでは、初期費用の総額の相場を見ていきます。
初期費用は家賃の4〜6か月分かかる
初期費用は、敷金・礼金・仲介手数料・前家賃などを合わせて、家賃の4〜6か月分が一つの目安です。家賃6万円の部屋なら、24〜36万円ほどを契約時に用意する計算になります。ここに火災保険料や鍵の交換費用、保証会社の利用料が加わることもあります。
家賃の1〜2か月分といった感覚で貯金を用意していると、いざ契約という段で資金が足りなくなりがちです。しかも引っ越し費用や家具・家電はこれとは別に必要なので、契約分だけでも家賃の4〜6か月分は見込んでおくと安心です。まずは希望する家賃にこの倍率をかけて、初期費用のおおよその総額を先に計算してみてください。
物件によって金額に幅がある
初期費用は、物件の条件によって同じ家賃でも大きく変わります。敷金・礼金がそれぞれ何か月分に設定されているか、仲介手数料が割引されているか、保証会社の加入が必須かどうかで、総額に差が生まれます。敷金礼金なしの物件と、どちらも2か月分の物件では、初期費用は家賃4か月分ほども違ってきます。
だからこそ、家賃が同じだからといって初期費用も同じとは限りません。家賃が少し高くても敷金礼金がゼロで、結果として初期費用が安く収まる物件もあります。気になる部屋が複数あるなら、家賃だけで比べず、それぞれの初期費用の見積もりを取り寄せて、総額で並べて比べてみてください。
引っ越し費用や家具家電は別で見込む
賃貸契約の初期費用とは別に、引っ越し費用や家具・家電の購入費もかかります。契約に必要なお金だけで予算を組んでしまうと、いざ暮らし始めるための冷蔵庫や洗濯機、ベッドを買うお金が残らない、という事態になりかねません。
引っ越し費用は荷物の量や時期で変わり、繁忙期の3〜4月は割高になります。家具・家電を一からそろえれば、これもまとまった出費になります。これらを合わせると、契約の初期費用に加えてさらに家賃の数か月分が必要になることもあります。契約費用と、引っ越し・家具家電の費用を分けて書き出し、生活を始めるまでにかかる総額でお金を用意しておきましょう。
初期費用を抑える方法
初期費用は、物件や契約先の選び方によって、まとまった額を抑えられます。総額を下げれば手元に現金が残り、入居後の暮らしにも余裕が生まれます。ここでは、初期費用を無理なく抑えるための具体的な方法を見ていきます。
敷金や礼金のない物件を選ぶ
敷金や礼金のない、いわゆるゼロゼロ物件を選ぶと、初期費用を大きく抑えられます。とくに礼金は退去しても返ってこないお金なので、これがゼロというだけで、家賃1〜2か月分をそのまま浮かせられます。募集条件で「敷金なし・礼金なし」と書かれた物件を探すのが近道です。
ただし、敷金がない物件では退去時のクリーニング代を別途定額で請求されたり、短期で解約すると違約金がかかったりする条件が付いていることもあります。目先の初期費用が安くても、退去時の負担が重ければ差し引きで損をしかねません。ゼロゼロ物件を候補に入れるときは、退去時の費用や解約の条件まで契約書で確かめたうえで選んでください。
フリーレントで家賃の負担を減らす
フリーレントは、入居後の一定期間の家賃が無料になる契約条件です。1〜2か月分の家賃がかからないため、契約直後にまとめて出ていく前家賃の負担を減らせて、初期費用を実質的に抑えられます。空室を早く埋めたい物件で付くことが多い条件です。
無料になる期間の分だけ、入居直後のお金のやりくりに余裕が生まれます。引っ越しや家具の購入で出費がかさむ時期に家賃がかからないのは、生活を立て直すうえで助かります。ただし、一定期間より前に解約すると無料分の家賃を後から請求される「短期解約違約金」が設定されていることもあるため、住む期間の見込みと合わせて選んでください。
仲介手数料の安い会社を選ぶ
仲介手数料は、同じ物件でも扱う不動産会社によって設定が異なります。家賃1か月分を請求する会社もあれば、集客のために半額や無料にしている会社もあり、どこを通して契約するかで初期費用が数万円変わることがあります。手数料を抑えたいなら、会社選びから見直す価値があります。
同じ物件が複数の会社で募集されていることは珍しくないので、手数料無料や半額をうたう会社を通せば、そのぶん初期費用を減らせます。ただし、手数料が安い代わりに保証会社の利用料や事務手数料といった別の名目が上乗せされていないかは確かめてください。仲介手数料だけでなく、初期費用の総額で比べて安い会社を選ぶのが確実です。
初期費用を払う前に確認すること
見積もりが手元に届いたら、そのまま振り込む前に、中身を一度立ち止まって確認します。ここで目を通しておくと、払わなくてよい費用に気づけて、初期費用をさらに抑えられます。ここでは、支払い前に確かめたい点を見ていきます。
見積もりの項目を一つずつ確認する
初期費用の見積書には、敷金・礼金・仲介手数料のほかにも、鍵交換費用や書類作成費、保証会社利用料など、複数の項目が並びます。それぞれが何のための費用なのかを一つずつ確認し、金額に納得できるかを見ておくことが、払いすぎを防ぐ第一歩になります。
見慣れない項目や、相場より高く感じる金額があれば、契約前に不動産会社へ遠慮なく尋ねて構いません。鍵交換費用や書類作成費のように、名目のはっきりしない費用や任意の費用は、交渉で下げられたり外せたりすることもあります。とくに保証会社の利用料は、家賃の半月分ほどになることもあり、初期費用に占める割合が意外と大きい項目です。見積もりの一行一行の意味を理解し、納得できる中身になってから支払いに進んでください。
不要なオプションを外す
見積もりには、消臭・抗菌サービスや室内消毒、24時間サポートといった任意のオプションが、あらかじめ含まれていることがあります。これらは必須ではないのに、最初から見積もりに組み込まれ、断らなければそのまま払うことになっている場合が少なくありません。1件で1〜2万円ほどになることもあります。
契約に必ず必要な費用なのか、それとも任意で外せるオプションなのかを、項目ごとに不動産会社へ確認しましょう。加入が任意のものは、断れば初期費用からそのまま差し引けます。本当に必要な費用だけに絞り込めば、初期費用を無駄なく、納得したうえで払えます。
まとめ
賃貸契約の初期費用は、敷金・礼金・仲介手数料・前家賃などが合わさって、家賃の4〜6か月分が目安になります。敷金は住み方しだいで戻ってくる一方、礼金は返らないお金で、物件の条件によって総額には大きな幅が生まれます。
初期費用を抑えるなら、敷金・礼金なしの物件やフリーレント付きの物件を選び、仲介手数料の安い会社を通すのが有効です。見積もりが届いたら項目を一つずつ確認し、消臭・抗菌などの任意オプションは外してもらいましょう。まずは希望の家賃から初期費用の総額を見積もって、契約に必要な資金を早めに準備してみてください。


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